2016年5月3日火曜日

2016年ネパール通信6   カトマンズからポカラへ-スモッグの原因ー

2016年ネパール通信6

カトマンズからポカラへ-スモッグの原因ー


  2016年5月1日、国際山岳博物館で展示更新を行うため、バスでカトマンズからポカラへ向かいました。朝7時半出発、午後2時45分着のグリーンライン・バスです。出発朝のカトマンズも相変わらずのスモッグ空で、ヒマラヤが見える気配はありませんでした。どうして、こんなにスモッグが濃いのか、道中見ていくことにします。

写真1 ターメルでは毎朝ゴミを分別している。

  人の活動が盛んなターメルでは毎日多量のゴミがでるため、毎朝数地点でゴミの収集・分別が
行われています(写真1)。かつては、ビニールなどはなく、ゴミは生野菜などの生ゴミが主体で、牛が食べて、ゴミを片づけてくれていました。また牛の糞は大切な燃料ですので、乾かすために、各家の壁には糞が貼り付けられていました。1970年代までの公園都市的なカトマンズは人と牛との持続的な共生関係によって営まれてきましたが、牛が街中にいると車が入ってこれなくなるという理由で、牛を街から追い出してしまいました。そこで、人と牛との共生関係がなくなり、1980年代以降は、増大するビニールをともなう各種のゴミが、大気・水質汚染加えて、三大環境問題のひとつになっていきました。さらにつけ加えますと、その結果増えたのが、ゴミを食料にするカラスと自動車にひかれたびっこの牛でした。
 
   カトマンズの街を出る時通る中央郵便局前では、カトマンズのランドマーク・ビムセンタワー*を見て、カトマンズに別れを告げたものですが、去年の地震で根元から倒れたため、写真2中央の木の後ろに立っていたビムセンタワーの光景見ることはできません。
*2015年ネパール春調査(7)
2015年ネパール地震(2) ポカラ紀行
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2015/05/2015-2015.html

写真2 かつてビムセン・タワーが見えた中央郵便局前。

写真3 カトマンズ市内を流れるバグマティ川の支流。

  カトマンズ盆地を出ていく時は、いくつかの川を渡りますが、いずれもバグマティ川の支流ですが、かつては清流で、魚が住んでいました。残念なことに、いまではいずれもドブ川になってしまいました*。この川(写真3)はビシュヌマティです。
*Kathmandu University Lecture―Environmental Changes of the Nepal Himalaya―
1-3.  Activity of the international cooperation
http://environmentalchangesofthenepalhimalaya.weebly.com/1-3-activity-of-the-international-cooperation.html

  カトマンズ盆地の郊外では地震で破壊された建物の復旧作業が行われていました(写真4)。

写真4 壊れた建物の再建は始まったばかりだ。

写真5 カトマンズ盆地を越える峠から振り返るとカトマンズはスモッグに覆われていた。

  カトマンズ盆地の西側の峠に着いて、盆地の中心の東方向を眺めると、盆地全体がスモッグに覆われていることが分かります(写真5)*。 カトマンズは建設ラッシュで、そのための採石場8写真5の右下)がいたるところにできています。
* 2015年ネパール春調査(9)
2015ネパール地震(4)ヌワコット王宮へ
5)カトマンズの大気汚染
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2015/05/2015-2015_28.html

  また峠から、これから行くポカラ方面の西を見ても、トリスリ河沿いの谷はびっしりとスモッグに覆われていました(写真6)。これまで来た時は、いつもマナスル三山が眺められたのですが、その姿を見ることはできませんでした。

写真6 峠から西のトリスリ河流域もスモッグに覆われていた。

写真7 地滑り地帯が続く。

  峠からトリスリ河に下っていく道沿いには何か所も崖崩れ個所(写真7)があり、雨期になると、崖崩れの被害が大きくなることでしょう。 カトマンズ・ポカラ間のトリスリ河やマルシャンディ河はいずれも大きな川で、断層沿いに流れていますので、崖崩れ個所が多くなるのでしょう。

  また、森林地帯に新しく道路を切り開いたところでは、道路沿いに発生したがけ崩れが、道路下の森林地帯を覆っています(写真8)。その森林地帯は火災のために、林床が黒く焼かれています。ポカラへの道路沿いの森林地帯はおしなべて火災の影響を受けています。このような大規模な森林火災ですが、おもに林床の草や藪を焼くのが目的で、雨期後の草や木の実などの再生産を目的としているようですが、大規模な森林火災は大量の煙を発生しますので、スモッグの原因になっていることでしょう。

写真8 造成された道路沿いに斜面崩壊が発生し、山火事で黒く焼けた地面を覆う。

写真9 トリスリ・バザールへの分岐点で火炎樹が咲いていた。

  トリスリ・バザールへの分岐点で、昨年ヌワコットへの地震調査の帰路に見た火炎樹*が咲いていた(写真9)。
*2015年ネパール春調査(9)
2015ネパール地震(4)ヌワコット王宮へ
4)ヌワコットからカトマンズへ
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2015/05/2015-2015_28.html

  泥色のトリスリ河では、ラフティング(ゴムボート乗り)が行われていた(写真10)。

写真10 泥色のトリスリ河で行われるラフティング。

写真11 ムグリンでも火炎樹が咲き始めていた。

  昼食のバス会社のレストランのあるムグリン近くでも火炎樹が咲き始めていた(写真11)。

  ムグリン近くのロープウエイ観光地は、スモッグで展望が効かないのにもかかわらず、大勢の人を集めている(写真12)。

写真12 ムグリン近くのロープウエイ観光地は大勢の人を集めている。

写真13 グリンでトリスリ河(右)にマルシャンディ河(左)が合流する。

  カトマンズ・ポカラの中間点ムグリンで、(右方向から)泥色のトリスリ河に、(左方向から)氷河ミルク色をしたマルシャンディ河が合流する(写真13)。

  マナスルとアンナプルナ両峰を源にもつマルシャンディ河は、泥色のトリスリ河にくらべて氷河ミルク(Glacier Milk)色をしている(写真14)。

写真14 マルシャンディ河は氷河ミルク色をしている。

写真15 マルシャンディ河沿いのドゥムレでは地震災害を免れたスレート屋根の民家が見られた。

  石のスレートなどを使った屋根は重いので、地震の時に破壊されやすい*が、マルシャンディ河沿いのドゥムレ周辺では地震災害を免れたスレート屋根の民家が見られた(写真15)。
*2015年ネパール春調査(7)
2015年ネパール地震(2) ポカラ紀行
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2015/05/2015-2015.html

  カトマンズやバクタプールではレンガ工場の煙が大気汚染の主な原因となっているが、 ポカラ近くでも新しいレンガ工場ができて、黒煙をはき出している(写真16)。

写真16 ポカラに近づくと新しいレンガ工場が煙をはいていた。

写真17ポカラのセティ川沿いに発達するテラス地形。

  ポカラに近づくと、マチャプチャリから発するセティ川沿いに発達する飛行100m程の河岸段丘を見ることができる(写真17)。 実は、この写真17の手前には日本語を話す男女ペアーが写っていて、出発前に席をめぐるいざこざがありました。ぼくはすでにひと月も前に前列右の窓側の席を予約していたのですが、当日朝になってその後ろの席に移れと言われたのです。トリスリ・マルシャンディ両河川を右手に見てポカラに行くのですから、写真を取るためにはこの席は欠かせないので、前もって予約した席だから譲れないと主張したところ、例の男女ペアーは運転席に入ることになったようです。この二人がどんな手と使ってぼくの席に割り込みをかけたのかは分かりませんが、楽しいはずのポカラ行きにとって、残念な経験になりました。

  マチャプチャリ峰の東側に分布する湖成堆積物の粘土を溶かし込んだセティ川の支流がポカラに流れてきます。本流のセティ川は深い峡谷になっていますので、端からは川底が見えませんが、写真18のように、粘土を含み、灰色に濁っています。

写真18 マチャプチャリ峰からのセティ川支流は粘土質の灰色に濁る。

写真19 ポカラ・ゲート(門)。

   ポカラ・ゲート(門)を過ぎる(写真19)と、セティ川の本流を渡る橋を通り、街の中央部分のバスセンターに到着します。

  ポカラに到着して驚いたのは、そここで山火事が発生していました(写真20)。 これまで5月のポカラに来て、マチャプチャリやアンナプルナの峰々が見えなかったことなかったのですが、この山火事がカトマンズからポカラ間の大気汚染の有力な犯人で、その犯人はネパール人であることを示しています。

写真20 ポカラ周辺で発生中の山火事。

スモッグの原因
  昨年の同じ時期(地震直後)に行ったカトマンズ・ポカラ間の旅行報告の写真と較べる*と、昨年は 空が青く、マナスルなどの山々が望まれたのですが、今年は森林火災による厚いスモッグの連続で、ヒマラヤを眺めることはできませんでした。昨年春の地震直後につづいて、秋のインド国境閉鎖の影響で、人間活動が低下がきれいな空をとりもどした可能性も考えられます。
*2015年ネパール春調査(7)
2015年ネパール地震(2) ポカラ紀行
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2015/05/2015-2015.html

  ネパールのスモッグに関する報告「Why have our skies been so hazy?」*によると、野火、車、食事のストーブ、レンガや他の工場などの国内原因にくわえて、インド・ガンジス平原からくる国外原因をあげています。
*Why have our skies been so hazy?
http://myrepublica.com/feature-article/story/41601/why-have-our-skies-been-so-hazy.html?utm_content=bufferb5699&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer
In recent years Nepal has been increasingly plagued by air pollution. We cough through the dry season while days with clear views of the Himalayas become rarer. Several obvious domestic sources contribute, including open fires, vehicles, cook stoves, brick kilns and other industries. But Nepal is also a significant importer of air pollution: Satellite images and computer simulations show pollutants emitted on the heavily populated Indo-Gangetic plains crossing into Nepal and climbing up our valleys and slopes from October until May.

写真21 国際山岳博物館展示 マチャプチャリ研究(1) 大気汚染と視程

  スモッグによる大気汚染問題についてはヒマラヤの見え方(視程)とも関係するので、国際山岳博物館の展示*でも行っており、雨期明けの10月は大気はきれいで、ヒマラヤが良く見えるが11月以降は山が見えにくくなることが分かっていました。
*国際山岳博物館展示
マチャプチャリ研究(1) 大気汚染と視程
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2013/06/blog-post_26.html

写真22 国際山岳博物館展示 マチャプチャリ研究(1) 大気汚染と視程 「Yes, we can.」

  2008年から2010年までの2年間の経験で、ネパールでゼネストが数日間続くと、空が澄み、ヒマラヤが見えることを体験しましたので、人間活動を抑えれば、かつての東京と同じように、きれいな空をもどし、富士山が見ることができるようにしたように、ネパールでもヒマラヤの空を取り戻すことができることを国際山岳博物館では訴えています。ヒマラヤはネパールの観光財産にもなっています。ヒマラヤが見えるように、大気をきれいにすることは、外国人観光客のみならず、ネパールの経済にとっても必要なことです。

  今回のカトマンズ・ポカラ間の観察によって、スモッグの原因としては森林火災が重要な原因になっていることが分かりましたので、ネパールのスモッグによる大気汚染問題はまず国内課題として取り組まねばならないことを示しています。森林火災の課題はネパールだけでなく、ブータンでも見られ、さらに大規模には東南アジアのインドネシアなど、またモンゴル・シベリア地域でも重要な環境問題*になっています。
* Kathmandu University Lecture―Environmental Changes of the Nepal Himalaya―
2-3. Environment Preservation
http://environmentalchangesofthenepalhimalaya.weebly.com/2-3environment-preservation.html

付録画像

  2016年5月8日、ポカラからカトマンズに戻る道路沿いで見られた山火事の跡の写真を添付します。





  さらに、2016年5月8日、ポカラからカトマンズのリング・ロードに戻り、そこで見た大気汚染の現状はすさまじいものであったので、あえて追加展示します。




0 件のコメント:

コメントを投稿